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白い悪夢




和尚の雄道です、こんにちは。


いよいよ暖かくなり、夏日も増えて来ましたね。



現代では、あまり使われてはおりませんが、

修行時代、よくフンドシを使っておりました。


お世話になっていた道場では、針子(はりこ)さんに時々お越し頂いて、修行僧の繕い物をおねがいしていたのですが、

その針子さんが空き時間に、白い布で我々のフンドシを縫って下さり、

時々、みんなにフンドシが支給されておりました。


以前、バスに乗っている時の事。


暑い日でした。

一人で、信者さんのお宅へお参り行った帰り道。


そのお宅では、いつもお昼を御馳走になります。


お伺いすると、たくさんの量の食事を振舞って下さる奥様から、

美味しいご飯を、お腹がはち切れんばかりに頂戴し後でした。


吊革に掴まりバスに揺られる私の身体のどこかで、

不意に「プチン!」という音が鳴りました。


別段体に痛みはないし、衣や着物が破けたわけでもなく、持っていたカバンの紐が切れたわけでも無い。


「何の音?」


特に気にせずに呑気に突っ立っておりますと、

降りるべき停留所が近づいて参りました。


降車ボタンを押し、バスが停まり。

出口に進み出した私の後ろから、私を呼び止める声が。


「お坊さん、手ぬぐいが落ちましたよ。」


振り向くと、私と同世代くらいの女性が、

床に落ちた白い布を取ろうと身をかがめております。


「??。。!!!」

それはタオルじゃない!


気づいた時には、もうその親切な女性の手には、私のフンドシが。。。


もはや本当の事など言えません。


どの様な罪にあたるのかは分かりませんが、

訴えられたら、負ける自信しかない。


「ありがとうございます。」

せめて、相手に気取られてはいけない。

傷つける様な事あってはならない。


「あなたの手に握られているのは、今の今までしていた私のフンドシです。」

言えるわけがない!


せめて、一切の疑念をもたれない様に、この場は振舞おう。


時間にすると、数秒の間。


私の脳がフル稼働して導きだされた、

次に私の行うべき行動は、


フンドシで自身の顔を拭い、

タオルに見せかけるという、


実にセコイものでした。


引きつった顔を自らのフンドシで拭い、

床に頭が付くほどの、深いお辞儀をした後、

大急ぎでバスを降り去りました。


この場をお借りして、改めて御礼申し上げますと共に、

心の底からのお詫びを申し上げさせて頂きます。





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